糖尿病腎症
糖尿病腎症とは
糖尿病腎症は糖尿病の3大合併症の一つです。糖尿病にかかってから5~10年で徐々に発症すると言われています。長い期間にわたり高血糖の状態が続くと、腎臓の中にある非常に細い血管がダメージを受け、糸球体と呼ばれる血液をろ過する組織を中心に壊れていく病気です。
初期の段階では自覚症状が全くありませんが、放置して進行すると血液中の老廃物を排出できなくなり、最終的には人工透析が必要な状態へとなってしまいます。現在、人工透析の原因の第一位は糖尿病腎症です。
糖尿病腎症の病気の種類(ステージ)
糖尿病腎症は、病状の進行度合いによって第1期から第5期の「病期=ステージ」に分類されます。それぞれの段階で、治療の目標や日常生活での注意点が異なります。
第1期(腎症前期)
尿検査も正常で、自覚症状は全くありません。この時期の目標は血糖コントロールを徹底し、腎症の発症を防ぐことです。
第2期(早期腎症)
尿の中に通常の検査では検出できない微量なタンパク(微量アルブミン)が漏れ始める時期です。この段階で発見して適切な治療を開始すれば、腎機能を改善させたり、進行を食い止めることができます。
第3期(顕性腎症)
尿検査でタンパク尿がはっきりと検出されるようになる段階です。この段階ではタンパク質の摂取制限などの食事療法を検討する必要が出てきます。
第4期(腎不全期)
腎臓の機能が大きく低下し、体内の老廃物が溜まりやすくなる時期です。むくみや貧血、息切れなどの自覚症状も起こりはじめます。血糖管理、食事療法を中心として治療を徹底し、さまざまな自覚症状にも対応する必要があります。
第5期(透析療法期)
腎臓がほとんど機能しなくなるため、人工透析、腎移植といった代替療法を選択する必要があります。
糖尿病腎症の症状
初期にはほとんど症状がありません。しかし、腎臓の機能が低下していくにつれて少しずつ体に変化が現れ始めます。一般的に見られる症状の変化を段階を追って説明します。
初期段階(第1〜2期)
この段階では症状はほぼありません。
進行期(第3期)
腎症がさらに進み尿に漏れ出すタンパク質の量が増えている段階です。この時期になると、人によっては以下のような症状を自覚することがあります。
- 足や顔のむくみ
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以前よりも疲れやすくなる
腎不全期(第4期〜)
腎臓の血液をろ過する機能が著しく低下して体内の毒素や余分な水分を排出できなくなるため、さまざまな症状が現れます。
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強い倦怠感や息切れが続く
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食欲が低下し、吐き気を感じる
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全身のむくみがひどくなり、体重が増加する
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貧血になり、立ちくら・ふらつきが起こる
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肌にかゆみを感じる
これらの症状が現れる頃には、腎臓の機能はすでに大幅に失われており、人工透析の検討が必要になる場合があります。
糖尿病腎症の治療法
当院では患者さんの病期に合わせて、腎機能を可能な限り守り抜くための治療を選択します。治療の柱は大きく分けて3つです。
厳格な血糖管理と新薬の活用
基本となるのは、血糖値を目標値に近づけて維持することです。
近年では血糖値を下げるだけでなく、腎臓を保護する効果が認められているSGLT2阻害薬、GLP-1/GIP受容体作動薬、フィネレノンといった新しいお薬の選択肢も増えています。これらを適切に組み合わせることで、腎症の進行を抑制します。
GLP-1/GIP受容体作動薬については「GLP-1/GIP受容体作動薬」のページもご参照ください。
血圧のコントロール(RAS阻害薬の使用)
腎臓の糸球体の血圧を下げるために「RAS阻害薬」と呼ばれるタイプの薬を優先的に使用します。ご自宅での血圧測定を推奨し、一人ひとりに合った血圧目標を目指します。
脂質のコントロール
腎症の進行には中性脂肪の増加も関与していると言われています。適切な中性脂肪の管理を目指します。
食事療法と生活習慣の改善
腎症の段階に応じて、以下のような食事の工夫が必要です。
塩分制限
血圧を下げて腎臓への負担を減らします。1日6〜7g未満を目指します。
タンパク質制限
進行した腎症では老廃物が溜まりやすくなるため、タンパク質の制限が必要な場合があります。
カリウム制限
同様に腎症が進行するとカリウムが排出できなくなるため、生野菜や果物を控える必要があります。
禁煙の徹底
タバコは血管を収縮させて腎機能を悪化させるため、禁煙は必須条件です。
糖尿病腎症についてのよくある質問
Q1. 尿にタンパクが出ていなければ腎臓は安心ですか?
A1. 残念ながらそうとは言い切れません。通常の尿検査でタンパクが検出されなくても、「微量アルブミン尿検査」という精密な検査で初めて異常が見つかることが多いからです。糖尿病がある方は、定期的にこの精密検査を受けることが大切です。
Q2. 一度悪くなった腎臓は元に戻りますか?
A2. 第2期(早期腎症)までの段階であれば、適切な治療介入によって尿アルブミン値が正常に戻すことが可能です。しかし、第3期以降にまで進行してしまうと、完全に元の健康な状態に戻すことは難しくなるため、そこから進行をいかに遅らせるかが治療の主眼となります。
Q3. 腎症と言われましたが、運動しても大丈夫ですか?
A3. 以前は安静が推奨されていましたが、現在は適度な運動が推奨される場合が多いです。ただし、必ず主治医と相談し、現在のご自身の状態に合った運動メニューを決めましょう。
Q4. 透析になるまでにはどれくらいの期間がかかりますか?
A4. 血糖値の管理状況や体質、血圧の状態によって大きく異なります。数年で進行してしまう方もいれば、適切な治療を継続することで、生涯透析を受けずに済む方もたくさんいらっしゃいます。
最後に
腎症は自覚症状がないまま進行し、透析になる可能性のある怖い病気ですが、尿検査一つで簡単に評価できます。そして、早期に発見して治療を行えば進行を防ぐことができます。
糖尿病の治療は血糖コントロールが重要ですが、それ以外にも様々な合併症もあるため、多角的な視点から治療方針をご提案します。当院の糖尿病診療の詳細は「当院の糖尿病診療」のページでもご確認いただけます。
西東京市(田無、ひばりヶ丘など)、東久留米市エリアの専門医による糖尿病治療をご希望の方は「はたけやま内科クリニック」へご相談ください。
