胸痛の原因:心臓の血管が痙攣する?
「胸が痛いのに、検査では異常がないと言われ。」そんな経験をお持ちの方は少なくありません。これまで心臓病といえば「血管が詰まる病気」というイメージが中心でした。
しかし最新の医学では、血管が詰まっていなくても胸の痛みや心臓の血管が詰まることが起こり得ることが明らかになっています。ここでは、その重要なポイントをわかりやすく解説します。
MINOCAという新しい概念
冠動脈に明らかな狭窄がないにもかかわらず心筋梗塞を起こす病態が「MINOCA」です。全心筋梗塞の3.5〜11%を占め、決して稀ではありません。
原因として、冠攣縮(冠動脈が痙攣して急激に細くなる現象)や、目に見えにくいプラークの破綻・びらんが重要とされています。

MINOCAは最終的な診断ではなく、「これから原因を精密に調べる必要があります」というもので、「詰まりがない」=「問題なし」ではないということが重要です。
INOCAというもう一つの概念
狭心症が疑われ、冠動脈造影を受けた患者さんの約半数には治療が必要な狭窄が見つかりません。これが「INOCA(冠動脈閉塞を伴わない心筋虚血)」と呼ばれる病態です。
その原因の中心は冠攣縮、冠微小循環障害(CMD)という血管の機能の異常と考えられています。
日本循環器学会のガイドラインでは、「器質的な狭窄がないからといって、胸痛を心臓以外の原因と決めつけてはいけない」とされ、それまで「気のせい」「ストレスでは」と言われてきた胸痛の多くが、実は血管の反応異常が原因であった可能性があります。
お酒で顔が赤くなる人は要注意? 遺伝子と冠攣縮の関係
アルコールで顔が赤くなる体質は、冠攣縮のリスクが高いことがわかっています。研究では、冠攣縮性狭心症の頻度は、赤くなる人=43.9%、赤くならない人=70.5%
と大きな差があります。
特に喫煙と組み合わさるとリスクがさらに上昇しますので、やはり禁煙は重要ですね。
ステント治療後にも起こる冠攣縮の問題
狭心症の治療で使われるのが薬剤溶出性ステントと呼ばれるものですが、一昔前のステントでは留置後に冠攣縮が誘発されることがあると報告されています。
その背景には、血管内皮機能の障害、炎症などが関係すると考えられています。
ステント後に胸痛が続く場合、単に「術後の違和感」と片付けず、血管の再評価をすることが重要かもしれません。
まとめ
胸の痛みは「異常なし」で終わることが多いですが、心臓病は詰まりだけでは説明できない、という重要な考え方です。
血管がどう動き、どう反応するかという“「機能」の異常が、胸痛や心筋梗塞の大きな原因となることが明らかになっています。
胸の痛みが続くのに検査で「異常なし」と言われても、もう一歩踏み込んで詳しく調べる必要があるかもしれません。
